薬物依存の治療法

物質依存症は「クスリ系」とも呼ばれ、アルコールやニコチンの他に、さまざまなドラッグによる薬物依存症を形成します。自分の意思で薬物のコントロールができなくなり、中毒・嗜癖・再乱用をもたらす障害です。
ミュージシャンや芸能人が違法ドラッグで摘発されるニュースが時々世間を騒がせます。
また、ここ最近は、合成ハーブと称する「脱法ドラッグ」も見過ごせない薬物問題となっています。薬物への依存はストレスフルな現代社会にあって、束の間、幸福感を味わわせてくれる錯覚なのでしょうか?

 

芸能人と薬物依存

芸能界では薬物依存事件が時折目を引きます。記憶に新しいのは2014年歌手のASKAが覚せい剤所持で逮捕、2009年には押尾学が合成麻薬MDMA服用で逮捕、2012年には麻薬吸引からホステスを死なせたと保護責任者遺棄致死罪で逮捕されました。

薬物依存の典型は歌手の清水健太郎で、1983年に大麻所持、1994年に覚せい剤所持、2010年には覚せい剤使用で逮捕・実刑を受けています。

 

合法ハーブと称する脱法ドラッグ

日本では2010年以降、流通が多くなり、死亡や交通事故でメディアを賑わした危険ドラッグは、2009年に脱法ドラッグから「合成カンノビナイト」が検出され、注目されています。
お香・ハーブ・アロマオイルなどと称して店頭やインターネットで販売されているので、気軽に手に入れることができますが、覚せい剤や大麻に化学構造を似せた合成物なので、脳や心身への影響は、違法ドラッグよりも破壊的とも言われています。

乱用による健康被害、違法ドラッグへのゲートウェイドラッグ(入門薬)にもなるので、「指定薬物」として、取り締まり・立ち入り検査など規制を厳しくしています。

「あやしいヤクブツ連絡ネット:http://www.yakubutsu.com 」などの啓発も強化されています。

 

薬物依存症の治療

薬物によって神経系が異常になると、元には戻らなくなることもしばしばです。ですから、完治よりも回復が目指されますが、薬物の使用を絶つ、離脱症状の克服、再使用しないよう自己コントロールを維持するなどが、治療では行われます。

病院での治療、精神療法(認知行動療法や集団療法など)の他に、自助活動が盛んで、ダルクというリハビリ施設や、NA(ナルコティックス・アノニマス)という非営利活動が、世界的に有名です。

体験者が語り合ったり、家族や周囲とのかかわりを改善したり、新しい仲間作りが回復には効果的です。

 

なぜ薬物依存なの?

薬物依存症は、何より薬物の作用から生じます。弱くて偏屈な人だけでなく、誰にもなりうるものです。廣中直之医学博士は、薬物依存には二つの願望があると言います。

一つは、「私の中には、もっとすごいチカラが隠れている」と主張したい気持ち、もう一つは、「自分の奥底までさらけ出して、誰かと深いレベルで自分とつながってほしい」という願望。

クスリの力を借りて、そんな錯覚に陥らなければ暮らしていけない空虚さは、本人の問題なのか、社会の問題なのか、難しいところです。

 
執筆:山本恵一(やまもと・よしかず)メンタルヘルスライター