睡眠障害、特に「不眠」について
睡眠障害や不眠には様々なタイプがあります。
◆睡眠障害の分類
①不眠症
不眠症には、器質性の不眠症と非器質性の不眠症があります。器質性とは、睡眠に関する脳の部位に障害が生じているものです。非器質性とは、悩みやストレスによる心因性によるものです。
非器質性不眠症は、原発性不眠症(他の障害に付随した不眠ではないという意味)とも言われます。一般的不眠症の多くは、非器質性の不眠症です。
A. 器質性不眠症
B. 非器質性不眠症
さらに、不眠症は以下のような特徴によって分けられます。
a. 入眠困難 … 寝つきが悪い。
b. 中途覚醒・早朝覚醒 …途中で目が覚めてしまう。
c. 熟眠困難 … しっかり眠れた気がしない。
入眠困難の場合は、悩みごとや考えごとをしてしまったり、心因的側面が強くあります。カウンセリングにより、問題を解決したり、悩み方や生活の仕方を改善してゆくことで、不眠が解消されることは少なくありません。
中途覚醒や早朝覚醒の場合は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病等の精神疾患を発症している可能性があります。
悪夢を見て飛び起きたり、寝苦しくて起きてしまうような場合はPTSDの症状かもしれません。
朝早くに起きたのに、動作を起こすのが億劫な場合はうつ病の症状かもしれません。
早めにカウンセリングや精神科・心療内科を受診されますようにお勧めします。
②過眠症
昼間の過剰な眠気が特徴です。
心因性ストレスの回避行動、もしくはうつ病の症状として現れる場合があります。心因性であれば、何を回避しようとしているのかをカウンセリングで探り、自分の身を守らなくて済むような対処方法を模索していきます。
うつ病であればカウンセリングだけでなく投薬治療を行う必要があります。
③昼夜逆転
習慣的に睡眠時間が日中にずれ込んでしまう場合があり、専門的には、概日リズム睡眠障害や睡眠・覚醒スケジュール障害と言います。
きっかけとしての背景には、自己についての慢性的な不全感やパーソナリティ障害等が関係している例が多く見受けられます。
体内時計がずれてしまっている場合は、投薬治療等を優先することが望ましいようです。
④睡眠時随伴症(含:悪夢・夜驚・夢遊病)
睡眠時随伴症とは、睡眠障害ではなく、睡眠に関係する意識や行動の障害で、以下のようなものがあります。
a. 悪夢 … 恐怖を感じる夢を見て、翌朝、その記憶がある。繰り返し同じ悪夢を見ることも多い。
b. 夜驚(睡眠時驚愕症) … 夜中に恐怖を感じているような絶叫、激動があるが、翌朝、その記
憶はない。
c. 夢遊病(睡眠時遊行症・夢中遊行) … 夜中に立ち歩くが、記憶はない。
繰り返し同じ場面の悪夢を見る場合には、第一にPTSDの可能性を考えます。
大きな事件や事故に遭遇したことがあったり、幼少期から虐待を受けていた等でトラウマを負っていたり、パーソナリティ障害に発展していることがあります。
カウンセリングと投薬治療の併用によってトラウマの解消を目指しましょう。
悪夢と夜驚は、後に夢を想起(意識化)できるかによって区別されます。
夜驚と夢遊病はどちらも意識化できないものと考えられています。この夜驚と夢遊病では、暴れたり歩き回ったりしてケガをしない配慮が重要です。
その他
⑤睡眠関連呼吸障害(含:無呼吸症候群)
⑥睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群)
⑦その他(器質性、物質依存性などを原因とするもの等)
◆不眠への対応について「こんな気持ちの時は眠れない」
・ワクワクしている
・イライラしている
・悲しい
・寝坊してはいけない
・やらなきゃいけないことが多い
「こうすると眠れた」
・落ち着く
・風呂に入る
・ヒーリング音楽を聴く
ポイント
眠るには「体の力が抜けている」という準備が必要です。
そのためには、リラックスすることが効果的です。寝室にはあまり物を置かず、眠るためだけの部屋であるように、刺激を少なくしておくことを心がけておくのが良いと思います。
寝酒禁止
飲酒によって眠りにつきやすくなるのは、酩酊状態になって思考力が鈍くなったり、不安が軽減されて、「一時的に」リラックス状態になるからです。
しかし、飲酒には依存性があるので、酒を飲まないと寝られない状態になってしまいます。厄介なことに、飲酒は耐性もつけてしまいますので、飲酒量が増えたり、同時に睡眠薬を飲んだりするようになってしまいます。飲酒と服薬を同時に行うことは危険です。
不眠には軽いものから重いものまであります。
「たいしたことではない」と思ってしまいがちな不眠ですが、眠れないことは、肉体にとって苦痛であり、能力も十分に発揮することができなくなっていくものです。