人格障害
不安と自殺
虚無感

1.ボーダーラインという言葉

ボーダーラインという言葉は、時代と領域によって異なり、多義的に用いられています。

  • 境界例:最も古く「精神病」と「神経症」の間という意味
  • 境界水準:医療領域で用いられる病態のレベルで「精神病」と「神経症」の中間の意味を越えて独自性を認められるようになった
  • 境界パーソナリティ構造:心理領域で用いられるパーソナリティの3類型の1つ。境界水準が状態を示す言葉である一方、境界パーソナリティ構造は特性を示す言葉である
  • 境界性パーソナリティ障害:9つの診断基準項目の内5つを満たした場合につけられる診断名

2.パーソナリティ障害の大分類

  • A群:奇妙
    自他の存在が混ざることが怖い、自他の境界がしっかりしていないタイプ
  • B群:劇的
    自他の存在は葛藤的で、自分一人では自己が明確にできず、他者を巻き込んで自己を確立しようとするタイプ
  • C群:不安
    自他が異なることが怖い、自他の境界を取り除いて他者と一体化したいタイプ

3.パーソナリティ障害の中の境界性パーソナリティ障害の位置付け

  DSM-Ⅳ-TR ICD-10
A群 妄想性 妄想性
スキゾイド 失調質
失調型 非社会性
B群 反社会性 情緒不安定性
境界性 - 衝動型
演技性 - 境界型
自己愛性 演技性
C群 回避性 強迫性
依存性 不安性
強迫性 依存性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.パーソナリティ障害の下位分類のマトリックス配置

  A群 B群 C群
男性多 妄想性 反社会性 強迫性
  スキゾイド 自己愛性(男性多)
境界性(女性多)
回避性
女性多 失調型 演技性 依存性


 

 

 

 

 

 

5.境界性パーソナリティ障害の診断基準

①DSM-Ⅳ-TR(2008年 新訂版第8刷 p237)

境界性パーソナリティ障害 Borderline Personality Disorder(301.83)

対人関係、自己像、感情などの不安定性および著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる、以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。
  1. 現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふり構わない努力※基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと
  2. 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係様式
  3. 同一性障害:著名で持続的な不安定な自己像または自己感
  4. 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い)※基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと
  5. 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し
  6. 顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらだたしさ、または不安)
  7. 慢性的な空虚感
  8. 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)
  9. 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状

        ICD-10(2008年 新訂版第6刷 p214)

 

連絡先:03-6677-6431