治療のいろいろ

精神療法のうち、主なものを挙げてあります。

様々な悩みを持っている方は、この精神療法によるカウンセリングを受けることになるでしょう。一応知っておいても良いのではないでしょう。
(「カウンセリング辞典」& 国分康孝 編「誠信書房」抜粋)

(「アドラー実践カウンセリング」ヒューマンギルド出版部)

(「暴露反応妨害法」九州大学精神医学部サイト参照)

精神分析療法
 精神分析的療法(ユング派の無意識の解釈含)

 精神分析療法

フロイトに拠って創始されたとする療法。心の装置には、理性、本能などに分けられ、更に無意識や抑圧と言った基本的な事を開放する事によって、症状の改善を図る方法。夢判断が有名。色々な改善や新しい手法を取り入れて現在も行われている。毎日続けるのが特徴。 

対象となる症状は限定されては居ないが、当初のヒステリーから始まって今は軽度の神経症に有効とされる。回数を多く取る必要から時間とカウンセラーの技量が求められる。 

精神分析的心理療法

精神分析療法の略式版である。週1回の面接を25回位重ねるのが普通。夢分析も導入する事がある。 

一般的にはこの方法が用いられる。主としてパーソナリティの変容に焦点を合わせる所に重点を置く。 

精神分析的カウンセリング

神経症者などの心の病を対象とするのではなく。所謂健常者に対して「親子関係」「育児相談」「恋愛・結婚・異性」「進路・人生相談」等の問題を助けるために精神分析療法の原理を活用するカウンセリング。 

大衆版である。精神分析的心理療法の簡便法と言える。 

ユング派心理療法

夢の分析を主としこれを記録してクライアントとともに更に夢全体の構 造を捉える。その上夢の細部に亘って、夢を見た本人が個人的に連想を加え、それを治療者が協力してより普遍的な連想に膨らませる。そうして夢の背景にある 無意識の状態をなるべく明確化しようとする技法である。 

河合隼男、秋山さと子などによって広められた療法。ユングの心理学を応用した療法は色々な所で使われている。 

箱庭療法 

ユング心理学を応用した技法。腰の辺りに置くと一目で見渡せる位の大 きさの箱に砂をいれ、沢山のミニュアチュアの玩具を選んで自分の好きな環境情景を作る。其処に自然に現れる無意識の調和を取ろうとする力や心の全体像の象 徴的表現がしっかりした自分の存在の基礎を作ると言う。小さな所に宇宙的な調和を表現するこの方法は日本人の情感に合うとされ広く用いられている。 

箱庭療法が有名であるが、両者を併用して用いる例も多い。 

芸術療法 

絵や粘土細工のような造形活動を心理療法に応用する事。非治療者には脅威を与えないで、自己表出の機会を与え、治療者には深層の感情や攻撃性を診断する機会を提供する。箱庭療法と組み合わせて用いられる事もある。  

ゲシュタルト療法

「ゲシュタルト」はドイツ語で各要素から構成される「全体的な」或い は「纏まりのある構造」と言う意味であり、適当な英語、日本語が無いためこのまま用いられている。多くの人は自分自身のほんの一部分しか意識しないで全体 の自己というものに目が届いていない傾向にある。そこで全体的自己像に気づいて貰う為に、過去の出来事をリアルの再現したり、現在起こって居る事をもう一 度再現して今の自分の全体像を認めようと支援する療法。 

ありのままの自分の全体像を認める事を支援する方法。いわば自己受容させる方法と言っても良い。 

交流分析

米国の精神科医エリック・バーンにより開発された精神療法。基本的に は①構造分析②やり取り分析③ゲーム分析④脚本分析の四本柱からなる。人は大人に成るまでの間にA:親から引きついた部分(ペアレント)、B:自分自身の 理性の部分(アダルト)、C:子供の心のままの部分(アダルトチルドレン)が有るとする。これらの各部分との交流が旨く行くように支援すると共に、人はそ れまでの信念に基づいてゲームをするのである。と解釈して、信念を分析する方法。 

 

 

来談者中心的療法
 非指示的療法

傾聴法

 現在、日本で最も普及している療法。米国のカール・ロジャースが開 発した手法。其れまでの原因と処方を指示しようとする従来の方法を批判し、クライエントの中に存在する成長への力を信頼し、非支持的、受容的に見守り、ク ライエントに気づいて貰う方法である。カウンセラーの積極的な傾聴がクライエントの気づきを促進させると言われる。

 

内観療法

森田療法と共に日本で開発された療法。元々は浄土真宗の一派に古くか ら伝わる「見調べ」と言う就業法を吉本伊信が宗教色を取り除き一般人にもできる方法として確立した。この方法は①父母配偶者など身近な他者についてA:し て頂いた事。B:して返した事。C:迷惑を掛けた事。の三点につき、具体的に想起する。②これを聞く側はただ聞いているだけで一切の批判、論評を加えな い。③この課題を1週間徹底して行う。と言う極めて単純、標準化された方法が特徴。

 他者への愛惜や感謝の念がしみじみと感じられ、心身症や神経症、一部の精神病に効果がある事で徐々に広がり始めている。

  

 指示的療法

論理療法 

米国のアルバート・エリスによって提唱された心理療法。人の悩みと言 うものは「出来事そのもの起因するものではなく」「その出来事をどう受け止めるか」による。つまり考え方次第で悩みは消えると言うのである。従ってクライ エントとカウンセラーが一緒になって考え方の是正を図る療法。認知行動療法の元になった手法である。 

現在は日本ではこれを行えるカウンセラーは極めて少ない。これを元に認知療法、認知行動療法へと発展したせいもある。 

アドラー派心理療法

アルフレッド・アドラーとその後継者達の理論に基づくカウンセリン グ。フロイト派の擬似親子関係を治療の前提としているのに対し、相互信頼・相互尊敬に基づく対等の協力的交友関係を前提にしている。従って通常は一つの問 題に焦点を絞り、その解決を共通の目標として合意し、10-15回の面接で終了する。解決策の助言は常に具体的な行動について積極的といえる程に行い、実 生活で実験してみるよう勇気付ける。 

 病気の治療も行うが主として、人間関係や家族間の問題や育児の問題を得意とする。

認知療法 

人間の病理(神経症)は誤った学習、行動、考え方、記憶に基づいてい ると捕らえ、このような認知的歪が固定すると自己を否定的に捉える様になると考えた。従ってこの認知的歪を変える事によって行動の改善を計ろうとするもの である。特に「うつ病者」の認知の偏りに着目し発症状況の分析と解説を通して、認知の関係を再構築する。 

 

認知行動療法 

認知療法や論理療法、自己教示トレーニング等を基にして作られた。当 初は「うつ病」を対象として人間の内的媒介過程(認知)と振舞い方(行動)の両方から、その人のクセを見つけ、それを再構成して建設的な信念(認知)、行 動に是正しようとする方法。カウンセラーとクライアントが共同で同じ目標に向かって共同作業をするのが特徴。効果が非常に良い事から現在はうつに留まらず パニック障害や統合失調症にまで広がって来ている。 

現在日本で急速に広がりつつ ある方法。今の所カウンセラーの養成が追うつかない状態。


行動療法
 行動療法(行動療法とは、不適切な考え方感じ方行動の仕方をより適切な方向に変化させる試み)

 行動療法

症状は無意識のコンプレックスによって出現するものとは考えず、不可 欠な条件反応を習得してしまっている状態と考えるのである。治療の過程はトリートメント又は行動変容と言われている。一般に適用される技法はレスポンデン ト技法、オペラント技法そして認知技法に分類される。クライエントを悩ましている症状を最も短期間に効率的に改善するのがこの行動療法と言われている。 

 

 自律訓練法

独のシュルツが創始したセルフコントロールによる心身弛緩法。自律状 態では心理的には感情の鎮静化、生理的には緊張に伴う神経症や心身症の治療に用いられる。又、一般的な心身の健康法或いはストレス緩和法として用いたり、 学校教育の効果促進や、企業の創造性の向上にも用いられる。 

 

 系統的脱感作

「海が怖い」とか「高い所が怖い」と言った事を「不安ー反応」習慣と 言い、「不安」に競合する「反応」を持ち居る事に拠って、不安状態を治療する方法。一般には「弛緩法(リラクセーション)が用いられる。不安の程度は本人 の自覚の程度で決まるので、最も低い刺激から初めて行く。こうした訓練により不安を消失させ徐々に強い不安反応に進んで最終的に「不安ー反応」を取り除く のである。 

 

 森田療法

1920頃、森田正馬が創始した。神経症に対する特殊療法。森田神経質症と言われる神経症に対し、原法では①絶対臥褥 期②軽作業期③重作業期④社会生活準備期に別れ、症状は有るがままに受け入れて、やるべき作業をやる事に集中させる。

生活の発見会はこの森田療法を自分で出来るように勉強する会である。

暴露反応妨害法 

 最近日本で取り入れられた「強迫行為」や「動物恐怖」等の治療困難 な症状に対して用いられるように成った行動療法の一種。あえて困難なケースをさせて、その不安を徐々に消して行くと言う行動療法を言います。かなり難しい ので、良い治療者の元で行わないと反って悪化させることがある。まだ日本には専門家が少ない。系統的脱感作に似ているが、不安を取り去るのに、12分で不 安が減少すると言う、動物の本能を利用する点が異なる。

今迄短期間には治療が困難と言われていた「強迫行為」や「動物恐怖」に対して、有効と言われている。まだ専門家が少ない状態。九州大学が最も進んでいる様である。