統合失調症について

統合失調症は、脳や神経系に生じる慢性の病気です。

 統合失調症は、さまざまな刺激を伝えあう脳をはじめとした神経系が障害される慢性の疾患です。詳細は不明な部分もあるものの、ドーパミン系やセロ トニン系といった、緊張‐リラックスを司る神経系や、意欲やその持続に関連する系列、情報処理・認知に関する何らかの系列にトラブルが起きているといわれています。


特殊な病気ではなく、100人にひとりくらいの割合でかかっている人がいます。
 世界各国で行われたさまざまな調査により、統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、およそ100人にひとりは、かかった体験を もっていることがわかりました。これは、統合失調症が奇病ではなく、誰しもが体験しうるような病気のひとつであるということです。


~症状~


陽性症状は安心感や安全保障感を著しく損ないます。

 急性期に生じる患者さんの感覚は「眠れなくなり、とくに音や気配に非常に敏感になり、まわりが不気味に変化したような気分になり、リラックスでき ず、頭のなかが騒がしく、やがて大きな疲労感を残す」、あるいは「自分のことが周囲の人に筒抜(つつぬ)けになり、常に人から見張られていて、悪口を言わ れ非難中傷されている」というような体験のようです。


 誰も何も言っていないはずなのに、現実に「声」として悪口や命令などが聞こえてしまう「幻聴(げんちょう)」や、客観的にみると不合理であっても本人にとっては確信的で、そのために行動が左右されてしまう「妄想(もうそう)」といった症状が代表的です。


 これらの症状を「陽性症状」と呼びます。陽性症状は、安心感や安全保障感を著しく損ない、一度、症状が現れるとそこからの回復過程は緩やかで、十分な時間を必要とします。


陰性症状は自信や自己効力感を奪ってしまいます。
 根気や集中力が続かない、意欲がわかない、喜怒哀楽(きどあいらく)がはっきりしない、横になって過ごすことが多いなどの状態として現れるものがあります。「一見、元気にみえるのに、なぜか仕事や家事が続かない」といわれるような状態です。


 また、込み入った話をまとめてすることが苦手になったり、会話を快活に続けることに困難を感じたり、考えがまとまらなかったり、話が飛びやすくなったりして、しばしば、自分でいろいろなことを決めて生活を展開していくことが大変難しく感じられます。


 これらの症状を「陰性症状」と呼びます。陰性症状は、なかなか症状として認知されづらく、怠けや努力不足とみられてしまう場合があります。


 陰性症状を「症状」と理解して対応しなかった場合は、生活上のさまざまな失敗や挫折を招くことが多く、生活をしていく自信や「自分はやれてい る」といった自己効力感を損ないやすくなります。これが、リハビリテーションをしたり、社会生活を維持するうえで要点となるところです。