「甘え」といわれ苦しんだ思い伝えたい (産経新聞から)

 【話の肖像画】漫画家・さかもと未明さん

 〈平成22年に病状が悪化し、歩行困難になるなど一時は活動休止を余儀なくされた〉

 膠原(こうげん)病のため、水の入ったコップも持ち上げられず、ペンも持てなくなって、身体障害者手帳の交付を受けたのがそのころです。手首と足首は可 動域がなく、指も曲がってしまっています。強皮症で皮膚が硬くなってつるつるに光って、その中で、さらに発達障害の診断も受けて。強皮症の合併症で呼吸が 止まる可能性は今もあるので、そうなったらどうしようとか、大きな恐怖感があります。

 〈24年に執筆や音楽活動を再開させ、著書「女子のお値段」(小学館)のほか、音楽CDも発売した〉

 理解者である夫を得て、発達障害の治療も始めて、体調が少しよくなりました。今、本の書き下ろしや版画、CDの制作に取り組んでいます。漫画は下絵と構 成ができれば、不自由なペン入れを助けてもらおうと思っています。私のもうけはなくても、作品が仕上がればいい。歌もお金にならないので、純粋な気持ちで 表現できればいい。それは主人が生活の面倒をみてくれるから考えられることです。普通だったら働ける状態ではないと、膠原病の医師も発達障害の医師もいい ます。でも、何か表現したい。疲れるので今は1日のうち15時間ぐらい寝ていますが、インタビューを受けるときは自宅に来ていただいているし、友達は「つ らかったんだね、合わせるよ」といって家に来てくれます。

 〈共著「まさか発達障害だったなんて」(PHP新書)では、支え合うことの大切さを訴えている〉

 発達障害のある人には、周囲のサポートが必要です。理解してもらい、甘えだといわないでもらえたら、その人にしかできない創作や普通の人にはない発想で 仕事ができる。気持ちが真っすぐで、嘘をつかないという美点も持っている。もっと認知されてほしいし、発達障害のある子供を育てることに悩んでいるお父さ んお母さんには、子供の可能性を信じてほしい。

 〈共著者の星野仁彦医師は、大人になって診断される「大人の発達障害」への薬物治療に偏見を持つ人が多いことを指摘している〉

 私の場合は薬が効きました。誤解しないでほしいのは、発達障害は脳の機能の障害だということです。だから薬が必要で、気合では治らないんです。私は先天 的に代謝に異常があり、薬がないと動けませんし、こんなふうに話すことはできません。ひどいいじめに遭いましたし、引きこもりも不登校も経験しました。 ずっと甘えだといわれて苦しみましたが、診断を受けてとても楽になりました。発達障害は本人も親も、どこに相談していいか分からないのです。体験を話すこ とで救われる人がいるなら、何でも話したいと思っています。(聞き手 寺田理恵)