アダルトチルドレンについて

皆さんはアダルトチルドレンという言葉をご存じだと思いますが、アダルトチルドレンの言葉の意味についてはご理解されておられるでしょうか?


アダルトチルドレンとは子供時から抱える親子関係の問題(親の子に対する関わり、子育ての問題)の影響から、成長した今も様々な問題を抱え、生き辛さを感じ続けながらも、日々一生懸命生きている人たちのことです。


では、アダルトチルドレンは具体的にどのような問題、生き辛さを抱えているのでしょうか。


それは自分とのつながり、他者とのつながり、社会とのつながりにおいて、問題を抱えているのです。


つながりの問題とは、つながりの欠如、喪失のことです。
すなわちアダルトチルドレンは自分、他者、社会とのつながりに対する欠如、喪失の問題を抱えて、生き辛さを感じ続けているのです。


では具体的にアダルトチルドレンの問題をあげてみたいと思います。
このアダルトチルドレンの問題につきましては、私が心理カウンセリングを受け賜った臨床経験に基づくものです。


アダルトチルドレンの問題について


自分とのつながりの問題

  • 自分に対する自信の欠如 自己信頼感の欠如
  • 自分を認められない
  • 自信がないので判断出来ない
  • 何かあると自分が悪かったのではと思う
  • 高い理想と完璧主義 完璧でない自分はダメと思う
  • マイナス思考 考え過ぎる
  • 何を考えているか 感じているか 分かりにくい

他者とのつながりの問題

  • 他者に対する不安が強い
  • どう思われているか気にしすぎる そのため自己表現を抑える
  • 自己評価を他者に委ねる
  • 他者に合わせすぎる
  • 他者を敵か味方で判断する
  • 断れない 頼めない
  • 適切な怒りの表現が出来ない
  • コミュニケーションの問題を抱えている
  • 大切な人から見捨てられることへの不安が強い
  • 他者に興味がない 信頼していない

社会とのつながりの問題

  • 社会生活するうえで漠然とした不安を感じ続ける
  • 常に周囲に対する過剰な警戒
  • まぁ、何とかなるという安心感を持てない

その他の問題

  • 親子関係の問題
  • 人生に希望を見出せない
  • 過去に対する解消されない怒り

さて、上記のような問題を抱えているアダルトチルドレンですが、なぜ、アダルトチルドレンは、自分、他者、社会とのつながりを欠如、喪失いるのでしょうか。

根源的な問題は、自分が自分とつながっていないということだと思います。


そして、自分が自分とつながっていない状態のことを、自己喪失と言葉を変えることが出来ます。


自分が自分とつながっている状態とは、自分に対して自信がある、自分に対する信頼感がある状態のことです。


そして、その自分があるからこそ他者と対等な人間関係を築くことが出来、また社会生活をおくるうえでも、安心を感じながら生活をすることが出来るのです。


しかし、アダルトチルドレンは自己を喪失しており、自分に対する自信を培うことが出来ず、また自己信頼感を獲得出来ず、その結果、他者や社会とのつながりの問題も抱えてしまったのです。


ではなぜ、アダルトチルドレンは自分とつながることか出来ず、自分を喪失してしまったのでしょうか。
そこには、子供時の親子関係の問題が大きく影響しています。


本来、健全な親子関係であれば、子供は親に無条件に愛されて、尊重されます。
子供にとって親から認められ、ほめられ、愛され、尊重されることは生きるための栄養源です。


無条件に親から愛され、尊重された子供は、ありのままの自分で存在することにOKを出せ、自分に対する自信や自尊心を培い成長しますが、アダルトチ ルドレンの家庭では子供が親に無条件に愛され尊重されることがなく、ありのままの自分で存在することにOKが出せなかったのです。


アダルトチルドレンは子供時に歪んだ親子関係を生き残るために、自分を抑え親に合わせるしか生きる道がなく、生きるために親に合わせ続けた結果、自分を失ってしまったのです。


そして、子供にとっては親からありのままの自分を認めてもらえなかったということは、自己存在に対する否定のメッセージを受け取ったということでもあるのです。


では、アダルトチルドレンの家庭に多い、問題のある親子関係(親の子供に接する態度)を見てみましょう。


親子関係の問題

  • 親の期待する条件を満たした時だけ子供を認める
  • 過干渉 親の期待を一方的に押し付ける
  • 過保護 子供は親の過保護を我慢して受け入れる
  • 常に他者と比較して評価する その結果けなす
  • 子供にグチを聞かせる 子供は嫌という気持ちを抑えてグチを聞く
  • 親子間のコミュニケーションがない
  • 親の機嫌によって子供に対して接する態度が日々違う 一貫性がない
  • 子供をバカにし続ける
  • 暴力 虐待 無視
  • 夫婦喧嘩が絶えず、子供に恐怖を与え続ける

子供は親を選ぶことが出来ません。
生まれてきた家庭を生きなければなりません。


このような家庭では子供が自分の気持ちを表現したり、意見や意思を言うことは禁止されています。
親が許さないのです。


また言っても、訴えても、分かってもらえません。

したがって子供は、自分の意思や気持ちを抑え続け、親に合わせ、我慢し続け、その家庭を生きるしかないのです。


そのため、アダルトチルドレンは自分を失っていったのです。


親が子供を1人の人間として尊重せず、子供を子供と尊重しない家庭を、機能不全家族と言います。
アダルトチルドレンの問題は、機能不全家族の問題とも言えるのです。


さて、自分が自分とつながっていない問題、自己喪失の問題としては、自分が何を考えているか分からない、また何を思っているか分からいことがあげられます。
これは親が子供が感じること、考えること、表現することを禁止、抑圧してきたため、アダルトチルドレンの問題として当然生じます。


何しろ自分を抑えて、親に合わせるしか生きる道がなかったのですから。

またアダルトチルドレンは自分に対する自信、自己信頼感の欠如の問題も生じています。


自信や自己信頼感は親からの安定した愛情を得ること、そして目標に向かってチャレンジした達成感等より培われます。


しかし、アダルトチルドレンの家庭では親からの安定した愛情はなく、親の愛情は条件付きであったり、まったく愛を示さなかったり、また親の期待を満 たす以外の行動を禁じたり、頑張って何かを成し遂げてもほめなかったりと、子供を正当に認めず、子供の心の成長を阻んだのです。


そして自分に対する自信を培えず、また自己を喪失してしまいますと、他者との関係において対等な関係を築くことは出来ません。


他者との関係において対等な関係が築けないということは、他者との関係のつながりの問題を抱えてしまいます。


自分に自信がないと自分で自分を評価することか出来ず、その評価を他者に委ねてしまいます。そのため他者からの否定的評価を受けることを極端に恐れてしまうのです。


そうすると常に他者の思いや視線に敏感になり、否定的評価を受ける恐れが強いあまり、自分を出せず、他者との関係、つながりが築けません。


仮に他者に合わせて人間関係を一見築いているようでも、本当の自分を出せていないので、他者からは本当の自分を理解されることもなく、他者との心理的なつながりも弱く、慢性的な孤独感を抱くことになってしまうのです。


また、親に合わせ続けたアダルトチルドレンは親からほめられた経験、自発的に考えてチャレンジした経験が乏しく、「自分は出来る」、「何とかなる」といった感覚を培っていません。


逆にいつ親に怒られるか等の恐怖から、不安の感覚を強化してきました。
そうすると、自分が抱える不安感を基に社会を捉えてしまい、社会とは常に不安で危険なものであると感じてしまうのです。


子供時に家庭において安心出来る居場所がないと、成長しても社会に安心出来る居場所がないと感じます。


それにそもそも社会とは人で構成されていますので、他者とのつながりが欠如してしまいますと、当然人の構成体である社会とのつながりの問題を抱えてしまうことになるのです。


そして自分、他者、社会とのつながりに問題を抱えることは、同時に生きる意思、意欲等とのつながりの問題をもたらします、すなわち自分の人生の今と未来に希望が見いだせなくなってしまうのです。


このように子供のありのままを大切にしない機能不全家族を生き残るために、アダルトチルドレンは親に合わせるしかなく、自分とのつながりを培うこと が出来ず、自分を失い、その結果他者とのつながり、社会とのつながり、さらには人生とのつながりにも問題を抱え、生き辛さを感じ続けることになるのです。


では、アダルトチルドレンからの回復はどのようにすればいいのでしょうか。


私はアダルトチルドレンの根源的な問題は、自己喪失の問題と考えていますので、アダルトチルドレンの生き辛さからの回復に関しては、自分を取り戻す、または培ってこなかった自分を培っていく作業が大切と考えています。


すなわち、自分に対する自信や自己信頼感を獲得、そして他者とのつながりを豊かにして、自分の居場所を築き、安心感を持って社会生活をおくることがアダルトチルドレンからの回復だと思います。


そのため、アダルトチルドレンが自分を取り戻すためには、過去を振り返ったり、今まで避けてきたこと、または出来なかったこと等、様々なことにチャレンジをしなくてはならないでしょう。


アダルトチルドレン 心の回復に向けて

  • 過去を振り返ること
  • 過去と今の継続する問題を把握すること
  • 自分が何を考えているか知ること
  • 周囲との不適応をもたらしている行動パターンを変えること
  • 人間関係を豊かにする行動パターンやスキルを身につけること
  • 様々なことにチャレンジして達成感を得ること
  • 他者に受け入れられている自分を感じること
  • 健全なコミュニケーションを学ぶこと

等、様々です。


自分を取り戻すということは、自分が自分を育てる作業をするということです。
ですから焦らずに、自分を大切に、自分のペースで自分を育て、回復のプロセスを歩んでください。


アダルトチルドレンからの回復のためには、アダルトチルドレン自助会への参加や、カウンセリングを受けることも有効でしょう。

(アダルトチルドレン心の回復から)