NHK 「ためしてがってん」から

うつ病とはどんな病気か?

うつ病の主な症状を挙げると・・・

  1. ほとんど毎日、抑うつ気分(ゆううつ)が続く
  2. 何に対しても楽しいと感じることができず、興味がわかない
  3. 食欲がない。体重が減る
  4. よく眠れない
  5. イライラする
  6. 疲れやすく、だるさがとれない
  7. 自分を責めてばかりいる
    自分には価値がないと思う
  8. 集中力が低下し、考えることができない
  9. 死んだ方がよいと思う

これは専門医の診断に広く使われている診断基準でもあります。
(1)または(2)を含む5項目以上に当てはまり、
2週間以上続いているようなら、苦痛や生活上の支障がある場合にうつ病が強く疑われます。
(アメリカ精神医学会「DSM-IV」)
※うつ病の疑いがある場合は、ご自身だけで判断せず、必ず医師の診断を受けてください。

なぜこんな症状が現れるのでしょうか?

ゆううつな気分になったとき、私たちの脳では、「ゆううつ、消えろ~」という信号が脳全体に送られます。

脳の中の信号の伝達は神経細胞から神経伝達物質が放出されることで行われます。

うつ病の人ではこの神経伝達物質の放出が減少しているため、命令がうまく伝わらずゆううつから抜け出せなくなってしまうのです。

さらにひどくなると、脳の一部が萎縮してしまうことがあることも分かっています。

うつ病は脳の異変なのです。

 

なぜ抗うつ薬が効かない人がいるの?

うつ病治療の中心となるのが抗うつ薬。
いったいどのように効くのでしょうか?

神経細胞から放出されても信号の伝達に使われなかった神経伝達物質は、再利用されるために神経細胞に回収されます。
抗うつ薬の多くはこの回収扉にフタをすることで、神経伝達物質を増やす働きをしてくれます。

さらに、こうして神経細胞間の信号の伝達がよくなると、神経細胞から栄養因子と呼ばれる物質が分泌され、弱ってしまった神経細胞が修復されたり、再生したりするのです。

しかし、Aさんは10種類以上の抗うつ薬を使ったのに、5年半にわたり、うつ病に悩み続けています。
なぜこれほど長い間、治らないのでしょうか?
実は抗うつ薬の効き方には個人差があるのです。

その原因の一つは、神経細胞にある神経伝達物質の回収扉の形にあると考えられています。

この扉の形は誰でも同じというわけではないので、抗うつ薬のフタが合わないことがあります。
このため、信号の伝達をよくすることが出来ない場合があるのです。

現在、日本で使われている抗うつ薬は十数種類。
効果が現れるかどうかは飲んでみないと分からないため、一つずつ試すというのが現在の治療法です。

少しずつ薬を増やしていくため、効果を見極めるためには、およそ3か月程度かかるといわれています。全く効果が現れなかったり、副作用が強くでた場 合、違う薬に切り替えますが、その場合でも、薬の量を徐々に減らしていくため、次の薬に切り替えるまでに数週間かかることもあります。

どうしても時間がかかってしまう場合もあるのです。

※症状や薬の効き方などは、様々な要因で変わります。また、強い副作用がでる場合があります。服用する抗うつ薬の量、期間については、医師の指示に必ず従ってください。

 

うつ病治療のポイントは?

広島大学の研究グループは、うつ病特有の脳の反応を明らかにしました。

モニターに○(丸)が出た後には、かわいい子犬やおいしそうなステーキといった、快を感じる写真が、□(四角)が出た後には唸るオオカミや画面いっぱいの毒グモといった、不快を感じる写真が映し出されます。

研究ではこのときの脳の反応を調べました。
実は、重要なのは、写真が表示される直前の○や□が出たとき。それぞれ「快感を期待する部分」「不快を予測する部分」が活動していると考えられるのです。

すると、うつ病の人は「快感を期待する部分」の働きが弱くなっている一方で、「不快を予測する部分」の働きが強くなっていることが分かりました。

つまり、治療を受けて少し上向きになっても、「これからきっとよくなるのだ」と思えず、逆に少しでも悪い傾向があると「まだまだよくならない」と脳が勝手に、さらに悪いことが起こる、と反応してしまうのです。

だからこそ、うつ病治療で大切なことは
「回復はゆっくりであることを知る」
そして、落ち込みが深いほど回復も遅くなるので、
「一刻も早く治療をスタートする」こと。

やはり休息・休養と抗うつ薬が治療の柱になります。

 

さらなる回復を目指す「認知行動療法」

休息・休養と抗うつ薬で回復してきた段階では「認知行動療法」という治療法もあります。

気分が落ち込むようなことがあったとき、その原因と考え、さらにはそのときの気持ちと強さを紙に書きます。

医師はその状況を前向きにとらえられる別の考え方が無いか問いかけます。

こうして別の考え方を見つけ、幅広く考えることで、気分を軽くする方法を見につけるのです。

広島大学の研究では、3か月の認知行動療法を受けた患者さんの脳では、「不快を予測する部分」の働きが弱まっていることが分かりました。

※「認知行動療法」は、すべての医療機関で行われているものではありません。また、病気の状態によって、この治療法を行うべきかどうかの判断も必要です。現在診療を受けている医師・病院に相談してください。