実は身近な「統合失調症」、どんな病気?

イラスト:クスノキミワ

脳の働きの一部に異常が起きる病気「統合失調症」は本人の自覚がないままに進行する。重症化を防ぐためには、家族や周囲の人が早く異変に気付くことが大切だ。産業医科大学 教授の中村 純(なかむら・じゅん)さんに統合失調症を引き起こす原因についてうかがった。

 

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統合失調症とは

 

「統合失調症」は、脳の働きの一部に異常が起きる病気です。およそ120人に1人の割合で発症するといわれており、それほど珍しい病気ではありません。

 

◆原因

 

人間の脳には、目や耳からさまざまな情報を受け取り、それらの情報を処理して、実行器官に指示を出すという働きがあります。こうした情報のやりとり を行うのが、さまざまな「神経伝達物質」です。しかし、統合失調症では、この神経伝達物質が脳の中で過剰に分泌されたり、反対に減少したりすることで、目 や耳からの情報を正しく処理できなくなり、脳に混乱が生じます。

 

病気の根本的な原因は、まだよくわかっていません。しかし、発症には、「生物学的要因」と「心理・社会的要因」の両方が絡み合って関わっていると考えられています。

 

生物学的要因——遺伝的な要因を含め、個人の性質などから、“病気の起こりやすさ”があると考えられます。

 

心理・社会的要因——代表的なものに、対人関係があげられます。また、進学、就職、結婚、出産などの生活の大きな変化がストレスとなり、発症の要因になるケースもあります。

 

これらの2つは、それぞれが単独で発症に関わるのではなく、絡み合って発症する可能性が高いと考えられています。ほとんどの患者さんが、15〜35歳という若い年代に発症するのが特徴の一つです。

 

■『NHKきょうの健康』2013年12月号より