ご注意!! 春になると「自殺」が増えるのです。

早春はストレスを抱えやすい季節。自殺の原因となる主な精神疾患はうつ病ですが、この病気は不眠症状を伴うことが多いため、よく眠れているか、疲れていないかと声をかけることが大切なガードになるのです。

 では、この早春の時期にどうして「死んでしまおうか……」とまで、精神的に追い込まれる人が増えるのでしょうか。主に、次のような社会的要因、環境的要因があげられると思います。

□1.決算期を節目にした倒産、失業

 3月は決算の時季。早春に倒産を迫られる企業や失業を迫られる従業員が増えるため、経済的な問題に直面して出口を失った人が精神的に追い込まれるのがこの時期なのです。

 個人事業主も早春には確定申告があり、1年の総決算の時期となります。仕事に精を出しても利益に大きく結び付かない実情を収入額の合計という形で目の当たりにするため、気分が深く落ち込み、不安に駆られる時期です。

□2.期末による異動、仕事の打ち切り

 早春は会社員の場合には異動が決まる時期であり、また契約社員、派遣社員、フリーランスにとっては、突然仕事を打ち切られる可能性が高い時期でもあります。

 長年続けてきた職場から、慣れない職場へと異動する不安。とくに、降格の人事を伴う場合には、失意も加わって極度に憂うつになる人も増えるでしょう。また、派遣社員、契約社員、フリーランスにとっては、長く続けてきた仕事を突然失うことによって、生活や将来への不安が急に押し寄せ、精神状態が不安定になりがちです。

□3.ライフイベントの変化

 早春は、総じてライフイベントの変化が起こりやすい時季。精神が極度に不安定な状態にあるときに、大きな変化に直面すると非常に強くストレスを感じる傾向があります。

 たとえば、子どもが進学したり卒業して就職をするなど、早春には子どもの成長を実感する時期でもあります。そんなとき資金難に遭遇したりすると、「いっそ家族に死亡保険金を手渡せれば」と極端な発想をしてしまう例もあります。また子どもが卒業して自立していき、「親としての役割がなくなる」ことを実感する欠落感、荷おろし感などによって、急に虚無的になることもしばしばあるでしょう。

□4.「木の芽どき」の心身変化

 よく「木の芽どきには注意しよう」と言われるように、木々に新芽が出る早春の季節は、急激な寒暖差が体にとって非常に大きなストレスになります。これが自律神経のバランスにも影響を与え、疲れがとれない、体がだるいなどの症状を感じやすくなるのです。

 もちろん、天候などの環境変化だけでは自殺を考えるほどの要因にはなりませんが、上記のような深刻な悩みを抱えていて、さらに季節の変わり目が体調不良を招くと、気分が陰鬱になり、深刻な問題をますます深刻にしてしまうのです。

■一人で考えないで! 信頼できる人や専門家に必ずアプローチを

 早春にはこの時季ならではのストレスに少なからぬ人たちがさらされます。

 そんな中、自殺企図が強くなってくると、本人だけで思考の転換するのは難しいものです。「死にたい」という気持ちが頭に浮かんできたら、まずは精神科を受診しましょう。薬物療法とともにカウンセリングを継続して受けていくと、その心境が少しずつ変わっていきます。

 また、悩みを一人で考えず、周りの信頼できる人に打ち明けてみましょう。スッキリしない場合には、心の問題や労働問題、債務や生活上の各種専門的な問題の電話相談、などの相談機関に話すのも有効です。インターネットで各種問題についての電話相談窓口を検索すると、公的機関、NPOやボランティア団体など、相談窓口がたくさん出てきます。

 自殺を考えるまで自分を追い込んでしまう状態は、気持ちや現状をありのままに受け止められていないためでもあります。まずは、自分が最も頭を悩ませている問題の解決に一番近いと思われる窓口を探し出し、アプローチすることです。相談することで、現状では想像もつかない「新しいヒント」が必ず見つかるはずです。

 また、周りも自殺を考える人の「サイン」を感じ取ることが大事です。自殺を考える人は1日中憂うつそうな顔をしていたり、かなり疲れている印象だったり、身だしなみもだらしなくなったり、逆に極度に明るくなることがあったり、というように、「いつもとは違う状態」になっているはずです。

 こうしたサインが見られたら、よく眠れているか、疲れがたまっていないか声がけするなど、「あなたを大事に思っている」と意思表示を行うことです。そして、じっくり話を聴いて一緒に悩みの解決に寄り添い、ゆっくり休ませて病院に付き添うなど、しっかり支えていくことが大切です。