栄養のバランスは重要です。

うつ病治療の問題と最新の研究について

心療内科の門をたたいても、簡単な問診と処方薬だけで、

「本当に抗うつ剤だけで治るのだろうか・・・」と、

悩んでいらっしゃる方が多いのではないでしょうか???


ほとんどの人が、薬で症状を抑えているだけで、

「投薬治療に限界を感じる。。」というのが現実だと思います。

事実、私自身も治療当時、そのような気持ちでした。


SSRIやSNRIといった抗うつ剤について考えてみますと、

その作用には、脳神経のレセプターに 「ふた」をして

「 見せ掛けの働き 」によって神経伝達物質を補うだけで、

伝達物質自体の分泌を増やすような働きが全く無い、

ということが下の製薬会社の説明から分かるかと思います。
→ 抗うつ薬の働き(薬会社HP) 


つまり、抗うつ薬とは、

・血圧が高いからと飲む降圧薬、
・咳が出るからと飲む咳止め薬

などと言ったものと同じであり、抗うつ剤は、根本的に

脳内物質の分泌異常を正常化さるわけではなく、

ただ症状を抑えるだけの「対症療法」であると言えます。



このような対症療法的な現在のうつ病治療に対して、

もっと客観的かつ可視的に解析して、根本的なアプローチで

治療を行おう、という研究もかなり進んできました。




■知られざる「 うつ病の人の脳 」について

1.異常を起こしている脳内物質は実は沢山あります!

現在、うつ病の原因は、セロトニンやノルアドレナリンといった

脳内物質(=神経伝達物質)の不足により引き起こされている

と言われていますが、これを「モノアミン仮説」と言い、

ご存知の方も多いのではないでしょうか。


しかし、ドーパミンの関与アセチルコリンの関与 を

ご覧頂くと分かる通り、分泌異常を起こしている物質は、

セロトニンとノルアドレナリンの2つだけでは無く、

 ・ドーパミン
 ・アセチルコリン
 ・メラトニン(セロトニンの前駆体)

といった物質にも及んでいるため、薬が対象にしている

伝達物質の種類だけでは足りないのです。


2.脳細胞の死滅により脳が委縮している!?

次に、脳そのものについても言及しなければなりません。

最新のうつ病の研究によって、脳自体にも大きな問題が2つ、

起こっていることが分かってきました。


1つは「 脳細胞の死滅(=脳の萎縮 )」という問題です。

東北大学名誉教授の松澤大樹医師は、

「うつ病で海馬や扁桃体周辺の脳細胞が萎縮・死滅している」

と指摘しており、PETという装置によって、うつ病の脳を

視覚的に観察することで、この事実を発見しました。


松澤医師がPETで撮影した下の画像を見ると「脳にキズ」

生じていることが確認できます。


うつ病克服マニュアル 

海馬とは記憶を司る部位で、扁桃体は感情を司る部位です。

怖いとか不安であるとか、怒りや喜びなど原始的でシンプルな

感情に深く関与しているのがこの扁桃体で、

 ・記憶力が低下する、⇒海馬の委縮
 ・感情がコントロールできず爆発する ⇒扁桃体の委縮


ということが言えそうです。


なぜ、うつ病によって海馬や扁桃体が委縮するのか?という

疑問も生じますが、実は、その仕組みも解明されています。

コルチゾールとは、副腎から分泌されるホルモンで、

血糖値をコントロールするといった働きをもっており、

本来体に必要なホルモンなのですが、加齢以外でも、

ストレスによって過剰に分泌されることが分かっており、

うつ病による脳細胞の委縮には、このコルチゾールが

深く関わっています。
つまり、「ストレスによって脳が壊れる」と、

はっきりと言うことができるのです。

 

そして、真に必要なうつ病の対策とは、

・ストレスを減らすこと、
・そして、過剰に分泌されているコルチゾールを抑制すること


だとお分かり頂けると思います。



3.うつ病の脳では血流の異常が起こっている?!

2つ目は、「 脳の活動(=血流)のアンバランス 」です。

臨床神経科学者であるダニエル・エイメン博士は、

著書脳画像でみる「うつ」と「不安」の仕組み にて、

「うつ病の脳では、深部辺縁系や前帯状回、基底核では、

活動過多=過剰になっている反面、前頭葉皮質の部位では、

活動が低下してしまっている。」と指摘しています。

一般的には、「うつ病になると脳の血流が悪くなっている」、

「脳の活動が低下している」とイメージされるかもしれませんが

実はそうではなく、血流が低下している部位がある反面、

他の部位では血流量が多く活動が過剰となっていて、

「うつ病になると脳をうまくコントロールできなくなる。」

というのが真実なのです。



エイメン医師は、松澤医師と同じく、うつ病の脳を可視的に

観察するため、SPECTという装置を用いることによって、

この事実突き止めました。


最近では、光ポトグラフィーという装置で、同じ様に脳の血流

を測定し、うつ病を診断しようとする試みも始まっています。

SPECTを用いたダニエルエイメンはその先駆者であり、

運動療法や栄養療法、認知療法など薬以外の治療も模索した

医師の一人でもあります。


以上のとおり、うつ病の脳では様々な問題が起こっています。

気持ちが落ち込むといった気分に関わる問題だけはなく、

 ・記憶力が落ちた、
 ・寝られない
 ・やる気が出ない
 ・集中力が続かない、
 ・頭が回らない・・・

といった能力に関わる問題もあり、

それは、

 ・アセチルコリンといった学習に関わる脳内物質の低下
 ・メラトニンの分泌異常
 ・ドーパミンの分泌の低下
 ・海馬や扁桃体の脳細胞の死滅と萎縮、
 ・脳の活動(血流)のアンバランス

という複合的な問題が起こっていることが原因です。


だから、うつ病と一口に言っても、人それぞれ症状が違い、

抗鬱剤も人によって効いたり効かなかったりするのには、

人それぞれ、脳に生じた問題も異なるからです。




■ うつ病の本当のメカニズム

上記をもう一度、まとめると次のようになります。

うつ病では、

 ①様々な脳内物質の分泌異常
 ②海馬や扁桃体の辺りの脳細胞が萎縮・死滅
 ③脳の中に活動が過剰になったり低下している部位がある


ということが複合的かつ重層的に発生しています。


では、なぜこのうような問題が発生してしまうのでしょうか?


それは、やはり、ストレスが最も大きな原因です。


イジメやトラウマ、虐待、仕事や育児の悩み、家庭内の不和、

親との軋轢など、慢性的に強いストレスを受け続けると、

まず、感情を司る「 扁桃体 」が刺激され、そして、その刺激が

慢性化し、扁桃体から出る脳の指令に異変が次に起こります。

脳からの指令に異常が生じると、ホルモンバランス、自律神経

といった体の正常な機能(恒常性機能)に乱れが生じ、結果、

上記のような脳の中の異常が起こって、うつ病を発症する、

といった経緯を辿ります。


繰り返すと、ストレスによって扁桃体の興奮から始まった、

異常な指令が体に備わる様々な機能を乱し、脳を狂わせ、

うつ病になるのです。

(左サイドバーのダニエルエイメン博士の著書参照)




■ 生活習慣がどう影響を及ぼすのか?!


ただ、脳の異常を起こす原因はストレスだけではありません。

ストレス以外にも正常な脳の働き、正常な体の機能を失わせ、

うつ病を引き起こす原因が生活の中にも潜んでいます。


それは次のようなものです。


・ 食生活の乱れによる栄養素の欠乏
・ ストレスによる栄養欠損       
・ 不規則な生活による自律神経の乱れ 
・ 睡眠リズムの乱れ            
・ 低血糖症(砂糖の摂り過ぎで起こる病気)


以下、順番に説明していきます。


1.食生活の乱れによる栄養素の欠乏

偏った食生活、レトルト、コンビニ飯などの乱れた食事は、

栄養不足や栄養欠損を引き起こし、

セロトニンなどの脳内物質の合成がきなくなります。

また、ビタミンやミネラルそれ自体が欠乏してしまっても、

脳内物質の不足と同じ様に、精神的にイライラしたり、

鬱々としたりする気分を引き起こします。

栄養素は、精神活動に強く作用しており、

栄養不足は精神の不安定さにつながるのです。




2.ストレスによる栄養欠損

「慢性化した極度のストレス」を感じていると、

ビタミンやミネラルを大量に消失させるので、

「わたしは食事はバランス良く食べてるよ!」

という人でも、慢性的、かつ、多大なストレスを感じていると、

栄養不足の状態を作り出している可能性が十分にあります。

にわかには信じられないかもしれませんが、

このことを示す非常に良い動画があるのでご覧ください。

恐らく、「ストレスによって栄養素が大量に消失すること」に、

あなたはビックリするはずです。↓


ストレス社会の現代では、食事をある程度ちゃんと摂って

いたとしても栄養欠損を起こしやすい環境であると言えます。

栄養の摂取が十分であっても、ストレスによる栄養素の消費量が

多ければ、結果的に栄養欠損の状態になってしまうのです。




3.不規則な生活による自律神経の乱れ

昼夜逆転のような生活を続けていてもうつ病の原因になります。

なぜならば、人間は、朝日を浴び、適切な時間に食事を取る事で

体=脳が朝であるとか、夜であるということを認識し、

セロトニンやメラトニン(セロトニンの前駆体)が分泌されます。

しかし、それが狂ってしまうような睡眠リズムは、

脳内物質をはじめとするホルモンバランスの乱れに繋がるので

結果的にうつ病の原因になったり、うつ病を悪化させてしまう

要因になのです。




4.低血糖症=砂糖や炭水化物の摂りすぎ

さらに、「 低血糖症 」と呼ばれるうつ病の要因があります。

甘いものを食べると急激に( 一時的に )血糖値が上昇し、

その後、血糖値を下げるため大量のインスリンが分泌され、

この時、低血糖症の体質のひとは、血糖値が急落しすぎて

「低血糖」という状態を作り出します。


低血糖状態になれば無気力や気分の落ち込みを引き起こし、

また、低血糖の状態に至るまでの間に血糖値が、

上がったり下がったりと、血糖値の乱高下が起ることで、

自律神経や脳内物質は乱れ、うつ状態に陥りやすくなります。



このことをよく解説している動画がありますのでご紹介します。

砂糖を摂り過ぎには、十分に注意を払ってほしいなと思います。





■ まとめ

つまり、

 ・ストレスから起こる脳の中の異常と、
 ・生活習慣から起こす体内の異常が、


複合的に重なり合い、あなたのうつ病を引き起こしている可能性

があるということで、つまり、うつ病の治療では、様々な要因を

チェックし直し治療法を決定していく必要があります。


下の図は、複雑なうつ病の要因やメカニズム、

それに対応する治療法を
筆者がまとめたものです。


 ☆うつ病克服マニュアル☆ 


うつ病は、このような整理に基いて、治療を検討してなくては

なりません。





■ 本当に必要なうつ病の治療法とは?!

従い、うつ病の治療・克服で重要なことは、

①『 心の問題=慢性的ストレス 』 に対するケア
  ⇒認知療法などによる慢性的なストレスへの対処

②『 脳と体の機能を低下させる原因 』を除去し回復させるケア
  ⇒栄養素の摂取
  ⇒脳細胞の再生
  ⇒低血糖症の対応や、睡眠リズムなど生活習慣の改善


です。

精神的なストレスな除去と、脳と体のバランスを整えるという

2つの面についてのケアが治療には必要不可欠です。

そして精神面のケアについてはカウンセラーや認知療法に

頼るべきです。


また、サプリメントや食事から栄養素をしっかりと摂取し、

また、うつ病につながりやすい生活習慣を見直すことで、

脳のダメージを回復させ、そして、本来、体に備わっている、

脳内物質、その他ホルモンバランス、自律神経といった

恒常性を安定させることを目指しましょう。



そうすることによって、辛いうつ病の症状を、

非常に高い確率で改善させることができます。



上記の治療方針は、「 栄養療法 」と呼ばれる新しい治療法で、

ノーベル化学賞を受賞したライナス・ポーリング博士が提唱し、

後に、エイブラム・ホッファー博士が継いだ、

「 分子整合医学 」という考えに基づいています。



脳内物質の安定化と、その他のホルモンバランスや自律神経

といった「体の恒常性」の正常化を目指す治療法で、

まだまだ知られていませんが、多くの治療例が存在し、

信頼性のあるものです。


脳と心は表裏一体なのです。
うつ病克服マニュアル



■ 薬とサプリメントに対する注意点

決して薬物療法を否定するものではありません。

1つの治療法として用いれば、大変、有効です。

栄養療法も治療に加えることによって相乗的な回復が期待

できます。


大丈夫、あなたは好くなります虹

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コメント: 1
  • #1

    tutaj (水曜日, 01 11月 2017 02:36)

    wyleliby