うつ脱出のためのプチ情報

うつ状態をうまく脱出する3つの方法

認知療法はハードルが高い

 うつ状態に悩んでいる人は500万人以上といわれている。そこから脱出しようともがいても、なかなか出口は見つからない。ひとりで簡単にできる「プチ認知療法」を覚えておきたい。

 毎日、漠然とした不安に襲われ、悲しくなる。食欲がなく、夜も眠れない。なぜ自分がこんな状態になってしまったのかも分からない――。うつ状態になるとこうした症状が表れるが、本人は〈自分がダメな人間だからだ〉などと自分を責め、悪化させてしまう。

 こうした〈うつ的思考〉を修正していくために効果的なのが「認知療法」だ。偏った思考パターンを客観的、論理的に分析し、より現実的な見方や考え方に変えていけば、うつ状態から脱出できるというわけだ。

 だが、認知療法はハードルが高い。陸上自衛隊衛生学校のメンタルヘルス教官を務める下園壮太氏(心理カウンセラー)が言う。

「うつは個人差が大きく、認知療法がぴったりはまる人もいます。しかし、多くの人は〈考え方=認知を変えろ〉と言われても難しい。うつ状態で気力が低下している人にとってはさらにハードルが高く、うまくいかなかった時はかえって自信を失ってしまいます。考え方を頭の中で修正しろというのは、高熱で苦しんでいる人に〈熱を下げろ〉というのと同じで、無理があるのです」

完璧にこなす必要はない

 そこで、下園氏が考案したのが「プチ認知療法」だ。考え方から変えようとする方法ではなく、その行動をしているうちに自然と考え方が変わってくる。ひとりで手軽に実践できて、軽いうつ状態の人や回復段階の人に、より効果を発揮する。代表的な方法を解説してもらった。

数え呼吸法  
 リラックスして目をつぶり、耳から聞こえる音に集中する。自分の呼吸音が聞こえるようになってきたら数え始める。吸う息で「い~」、吐く息で「ち~」とカウントし、まずは20回。徐々に増やし、100回まで数えたら終了。物足りなければ再び数え直す。

「数えるペースに合わせて呼吸するのではなく、今の自然な呼吸を数えるのがポイントです。やめたくなったら、いつでもやめて構いません。〈○秒かけて吐いて○秒かけて吸う〉といった呼吸法だと、完璧にやろうとして挫折する。余計なことを考えず、自然な呼吸をただ数えているだけで心が落ち着きます。〈きっちりやらなくても、自然に任せていれば楽になれるんだ〉と考えられるようになる」

いいとこ探し 
 何でもいいから、少しでも自分が〈心地いい〉と感じたことを言葉にして、書き出していく。お茶がうまい、妻がやさしい、映画が面白い、シャワーが気持ちいいなど、何でもOK。まずは5項目、最終的には30項目を目標にする。

 今の〈いいとこ〉を見つけて意識できるだけで、安心感が生まれる。無理して、何事も明るい視点で見られるポジティブな自分になろうとしなくていい。

動作法  
 ここでは首のストレッチを取り上げる。首をゆっくり回し、痛みを感じたら止める。そこから首を少しだけ戻しながら痛みが始まるポイントを探す。そこで顔、肩、背中など体の力を抜くと、痛みを感じなくなる。そのまま再び首を回してみると、最初に痛みを感じたポイントを通過できるようになる。これを繰り返すだけでいい。

「心と体の疲労がうつ状態の原因です。動作法によって、それまでよりも大きく首を回せるようになれば、自分で自分の体を思うようにコントロールしていることを体感できる。自然と自信も戻ってきます」

 いずれの方法もやりたい時にやればいい。合わないと思ったら、即やめる。難しいことは考えなくていいのだ。

日刊現代より